【NYの暮らし】小神野 真弘が語るコミュニティベースのジャーナリズムとは

NYの暮らし
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【NYの暮らし】連載4回目にご協力いただいたのはライター、フォトグラファーの小神野 真弘(おがみの まさひろ)さん。これまでに南アフリカや世界各地のスラム街を訪れ、社会問題や歴史をテーマに取材、撮影、執筆をされてきました。

小神野さんはニューヨークの大学でジャーナリズムを学ぶため2017年に渡米。1年半の大学生活を終えられ、つい先日、日本へ帰国されてしまいました。

実は彼は私が通っていた日大藝術学部の先輩で、渡米されたばかりの時にお会いしたのが約10年ぶりの再会でした。大学当時の彼はエキセントリックな一面があった一方(笑)、根は優しくて周囲からいつも慕われる人という印象。今回このプロジェクトに快くご協力いただいた中で、改めて小神野さんの直実で暖かな人間力に触れることができ、その豊かな生き方がとても素敵だな、と率直に思いました。

インタビューは、卒業式が終わった1月末にニューヨークのソーホーで行った時のものです。

ルームメイトの生活音が丸聞こえのニューヨーク暮らし


ーニューヨークでの留学を決めた理由は何ですか?
小神野:英語の上達のため、アメリカのジャーナリズムを学ぶため、そしてニューヨークで暮らしてみたかったから。だからニューヨークのジャーナリズムスクールに通うというのは一石三鳥だったんだ。

なぜニューヨークかと言われるとはっきりとはわからないけど、たぶん、未知に囲まれた感じをまた体験したくて来たんだと思う。昔、大学のために茨城の田舎から東京に出てきたとき、東京がすごく輝いて見えたんだ。生活環境がガラリと変わって右も左もわからない感じ。毎日がワクワクした。あの感覚また味わえるんじゃないかなって。

ー現在はどんなところにお住まいなんですか?
小神野:クイーンズにある中国人オーナーの一軒家でルームシェアしてる。3回建ての家にシェアスペースが6部屋あるところなんだけどすごく狭くて、俺の部屋はほぼベッドだけで占められている。しかも部屋の仕切りは天井が吹き抜けになっていて、隣のルームメイトの生活音が丸聞こえなんだ。みんな引っ越してきた最初の時はすごく気を使って静かにしているんだけど、ある一定の期間が過ぎると慣れちゃって豪快に生活音を出すようになるんだよね 笑。俺は同居人との交流もあまり無いし、課題もカフェとかでやるから、ほとんど寝に帰ってるだけという感じ。

ーとってもお忙しそうな小神野さんですが、在学中のスケジュールは実際どんな感じだったんでしょうか。
小神野: 週4日授業があって、毎週4本課題がでるんだ。それと週に1回、ニューヨークの各地域でやっているコミュニティミーティングというのに参加していた。休みの日も課題に追われて、毎日平均睡眠時間は4時間くらい。週末でも時間が取れてやっと7時間くらいかな。

インタビューを行った日本食レストランBessou

言葉が無くなった時に人々は何を失うんだろう

ーニューヨークでジャーナリズムを学ばれて何を得ましたか?
小神野:ここで学んだことの一つは、コミュニティに根ざしてものを考えることの重要さ。日本でライターの仕事っていうと、一般的には専門家から話を聞いて記事にするというケースが多いけど、こっちのジャーナリズムで重視されるのは、まずその問題に関連するコミュニティの一員になることから始めるんだ。コミュニティの人間関係を築くことが最初のステップ。

それはベテランも同じこと。俺が行ってる大学の教師は、NYタイム誌で編集者やってたようなすごい人たちなんだけど、彼らって基本的にはみんな自分の専門分野があるんだ。例えばシリア出身の教師はアメリカにおけるイスラムコミュニティを専門としていて、彼女自身がそのメンバーでもある。そうなるとやっぱり人間関係も濃いし、彼女しか得られない情報っていうのがあるんだよね。

でももちろんそのコミュニティ内だけの知識じゃなくて、同時に政治や経済などあらゆるものを知ってなきゃいけない。いろんな要素が絡んで、どんどん輪が広がっていくのが楽しい。俺がやりたいのはそんなジャーナリズムだなって、ニューヨークに来てから思ったんだ。

 

小神野:最後の学期はニューヨークの言語の絶滅っていうテーマに取り組んでいたんだ。ニューヨークで現在話されてる言語の半分はあと20年くらいで絶滅するのでは、と言われているんだけど、言葉が無くなった時に人々は何を失うんだろうというのを活字にしたいなと思ったんだ。

取材をしていくうちに、多様性というものを深く考えるようになった。ニューヨークは多様性の街だと良い意味でよく言われているけど、じゃあ多様性って何だ?なぜ多様性が大事なんだ?って言われた時に、実は多くの人がよくわかっていないんだと思う。俺もいまだにはっきりとはわかってない。

でも少し理解できたのは、ニューヨークにいるあらゆる民族の人たちって、自分たちの国や地域を代表しているという誇りを持っていて、同時に、歴史に対する怒りだったり、現状にフラストレーションを持ってる人もいる。この取材でそういった事実に触れることで、ニューヨークの多様性というものがもっとビビットに見えてきたんだ。

その時の、自分の中での世界観が広がった感覚がすごく気持ちよかった。社会ってこんな風になっているんだ。自分は社会をこんな風に見ることができるんだって。それは、何か一つ獲得したみたいな成功体験の様なもので、これをもっと体験していきたいなって思ったんだ。

周りに好きな奴がいるから頑張れる。


ー小神野さんの仕事のモチベーションとは?
小神野:俺は怠惰な人間だから、自分一人のためだけにできる努力の量ってすごい限られているんだけど、でも特別な誰かのためなら命を削ってでもがんばれるんだ。基本的に仕事のモチベーションのほぼ100%は、俺を慕ってくれる人を失望させたくないってこと。期待以上の成果を出したい、認められたいって気持ちが常に原動力。

そういうと、自分がないって怒られたり、他人の目線や評価は気にするな、だせえって言われることもあるけど、それは違う。自分を殺して働いている訳ではないし、俺が、一人一人の信頼へどう敬意を払うかという話なんだ。

嬉しかったのが、去年の夏に元の職場から新しいプロジェクトに参加しないかと声をかけてもらったこと。1年半離れてて、卒業したって聞いたらまた声をかけてもらえるなんてすごく有難いことだと思う。今まで20代でやってきたことが無駄になってはいなかったんだなって。

俺のことを信頼してくれている人がいて、その期待に応えるのってすごく心地いい。周りに好きな奴がいるから頑張れる。だから人って周りに囲まれて生きてるんだなって、最近思うようになったよ。いろんな人に囲まれてさ。・・・そういう風に考えると、俺は人っていうものがやっぱり好きなんだなあ。

ーすごく素敵です。ちなみに、嫌いな奴にはどう対応するんですか?
小神野: 嫌いな人のことはすぐに忘れてしまうから、あまり考える機会がないかな。

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ー今までスラム街での取材など危険なことにもチャレンジされてきた小神野さんですが、新しいことへの恐れや不安はありますか?
小神野:不安はあるけど、恐怖はあまり感じない。楽天的だからな。新しいことっていうのはいつも不安なものだけど、まず自分を逃げ場のないところに置いてから考えるようにしていて、そうすると結局、恐怖を感じている暇がないんだ。

ー英語への恐れもありませんか?授業で使う英語はかなり難しいかと思いますが。
小神野:いまだにコミュニケーションで突っかかることもあるけど、とりあえず大丈夫。授業でみんなが白熱してまくし立てるとわかんなくなるけど、最近だいたいわかるようになった。でも、半年ごとに自分の英語の理解力が上がってきてるのが実感できたからあともう半年欲しかったな。

本当は、2年間学生やって、その後1年くらいはここで働きたかったんだ。そういった話もあったんだけど、結局ビザの都合で難しかった。自分はニューヨークではまだまだアウトサイダーで、全て理解できたなんて到底思えてないし、まだここに残って学びたいんだけどね。もうすぐ日本に帰るけどまた戻ってきたい。観光ビザでしょっちゅう行き来するのもアリかな。

そこでしか見れないもの見れるのってなんかすごくロマンチック

ー将来の夢を聞かせていただけますか?
小神野:長期的な夢は、メディアを立ち上げること。日本でもアメリカでも、今って人々の分断が問題になってる。で、例えば右っぽい人々と左っぽい人たちは互いに憎み合ってるわけだけど、「相手がなぜそんな風に考えるのか」っていう考え方にもう少しスポットライトがあたってもいいと思ってる。俺がNYにきて世界観が広がったように、読んでくれた人の世界観を広げられるようなものを作りたい。

それもコミュニティベースとなるんだけど、例えば、ある議論で激しく対立する両サイドの人たちとそれぞれ2ヶ月くらい生活を一緒にして、何が彼らをそこまで掻き立てるのかという疑問に答えを出したい。

一方の人たちの主張に穴があるって指摘する記事は腐る程あるけど、彼らの原動力や、彼らの根底にある悲しみがどういうことなのか、コミュニティの外の人間がわかる形で書いている記事って実はあまりないんだ。

例えば日韓の問題だってそう。俺たち日本人からすると若干偏見があるのではと思えることも、彼らからすると、それが歴史だから、という答えになる。議論のとっかかりがない状態。この前提をまず共有しないと、議論は進まない。だからこそコミュニティに根ざしたレポートが必要なんだ。

基本的には人類は戦争を無くせないし、いがみあい続けるのもある程度は止められない。地理的に離れているし、歴史が違えば仕方ないんだ。それをやっぱりニューヨークにきて学べたね。だってここなら1ブロック離れたら、全然違う国の人と話せるんだから。改めてそういう人たちと話しているとやっぱりインパクトがあるよ。彼らにとっての歴史は、彼らにとっての歴史。当然のこと。

もう一つの夢は、ニューヨークで学んだこと経験したことを、場所を変えてまたやりたいな。世界中のいろんな都市にそれぞれ2~3年滞在してその町で働いて、こんな感じで友達も作りつつ、そこでしか見れないもの見れるのってなんかすごくロマンチックだと思う 笑

小神野さん、ありがとうございました!

【小神野さんの著作】

 

【取材・撮影場所】
Bessou(別荘)
http://bessou.nyc/
5 BLEECKER STREET, NEW YORK, NY 10012

McNally Jackson Independent Booksellers and Cafe
https://www.mcnallyjackson.com/
52 Prince St, New York, NY 10012

Sohoの街角

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